最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)109号 判決 1966年2月15日
上告人
神西善栄
右訴訟代理人
佐々木一珍
栗原勝
被上告人
大森幸明
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人佐々木一珍の上告理由書第一(ただしその六を除く)、第二および上告理由補充書各記載の上告理由について。<省略>
同上告理由書第一の六の上告理由について。
原審が確定した事実によれば、被上告人の母大森ヒデヨは、昭和一〇年三月二六日、菅福光と結婚式を挙げて内縁関係に入り、同年四月二〇日過頃から同棲生活を始め、同年七月五日、適式な婚姻届を了したものであり、被上告人が出生した日は昭和一〇一一月二六日である。しかして、民法七七二条二項にいう「婚姻成立の日」とは、婚姻の届出の日を指称すると解するのが相当であるから、ヒデヨと福光の婚姻届出の日から二〇〇日以内に出生した被上告人は、同条により、福光の嫡出子としての推定を受ける者ではなく、たとえ、被上告人出生の日が、ヒデヨと福光の挙式あるいは同棲開始の時から二〇〇日以後であつても、同条の類推適用はないものというべきである(大審院民事連合部昭和一五年一月二三日判決、民集一九巻一号五四頁、大審院昭和一五年九月二〇日判決、民集一九巻一八号一五九六頁参照)。されば、被上告人が福光の嫡出子としての推定を受けるとの前提に立つて、福光が法定の期間内に嫡出性否認の訴を提起しなかつた以上、右推定が確定し、被上告人の本件認知請求は許されないとする上告人の主張は理由がない。これと同趣旨に出た原審の判断は正当であつて、所論の違法はない。所論は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(柏原語六 五鬼上堅磐 横田正俊 田中二郎 下村三郎)